第1話:パートで働く主婦 佐藤ゆうこ、将来の不安と時間に追われる日々

佐藤ゆうこ、45歳。

海が見える瀬戸内海、道後温泉が有名な愛媛県松山市に住む兼業主婦。

同じ歳の優しい夫と、高校生2年生の息子、中学3年生の次女との4人暮らし。
毎日、仕事に家事と忙しい日々を送っている。

「やっと仕事が終わった。疲れた、帰りにスーパーで買い物して・・・。」
パート先の駐車場から、自分の車に乗り込む。
今年は、この車の4回目の車検、またお金が・・・。

毎日の片道7キロの道のりは、もう慣れたとはいえ辛い。
思えば、このような日々を、子供が小学校にあがってから、もう10年以上も続けている。

「45歳。母として頑張っているけど、たまには女性として自分自身にもお金をかけたい・・・。バックや車、お洒落な服を買ったり、友達とご飯にいったり・・・。」

しかし、家事、子育て、仕事と忙しすぎて、自分の時間、精神的なゆとりがない毎日。

旦那と、今の自分の収入では、数年先の子供の大学の学費が心配だし、まして県外に行った場合、学費のほかに、家賃、仕送りなど、考えるだけで頭が痛くなる。

今の目の前の生活がやっとで、しかもコロナのせいで、旦那の給料はあがる気配がまったくない。下手をすれば下がる可能性だってある。

下の子が小学校に上がるタイミングでパートを始めたけど、お給料は上がらず、ボーナスもないまま10年。

最近は、旦那の両親が少し認知症気味で介護しないといけないかも・・

今まで子供為に頑張ってきた私。

ときどき、「自分はいったい、いつになったら楽になるのだろう…。」とフッと思ってしまう。

 

 

同じ職場の先輩アツコさん、ご主人の収入がいいのか、ヴィトンのバック、エステ、買い物と、休みのたびに楽しんでいる。

子供も2人いて、上の子は京都の大学で、2人目が来年、東京の大学に進学する。

そういえば最近、車も新型プリウスに変えて、見た目も若くて私とは正反対。

 

 

 

若い時は、「愛情さえあれば、お金なんて無くても幸せ!」って思っていたけど、

現実問題、何をするにしてもお金がないと始まらない。この年齢になって、身に染みて思うようになった。

お金、バック、車、時間がない私。このまま人生を終わりたくない!

とはいえ、私も45歳・・・体力的に毎日の通勤はしんどい。

 

 

下の子が社会人になるまで、あと7年。

60歳の定年まで働くとすると、あと15年。

こんな毎日を、あと15年も続けるなんて、そもそも嫌だわ・・。

また年金支給70歳、老後2000万円問題、将来の事を考えると不安しかない。

 

年金支給が70歳になると、60歳から70歳まで10年間の生活費をなんとかしないといけない。
10年間生活できる貯金ないし、結局は70歳まで、あと25年も働き続けないといけない。

ゆうこの脳裏に、最悪の未来が浮かんだ。

 

 

反対に、現実逃避するように、ヴィトンのバック、エステ、買い物と、優雅にショッピングする、自分の姿も浮かんできた。

私も、アツコさんのようになりたいなぁ~。

 

 

「プップー!!」

後ろの車にクラクションを鳴らされ、ハッとすると、信号が青に変わっていた。

 

急いでアクセルを踏み、いつも仕事帰りに寄るスーパーへ向かった。